マタニティーブルーは産後の3人に1人が経験すると言われ、決して珍しいものではありません。自分がマタニティーブルーかもしれないと思ったとき、どうすれば診断できるのか知っておきたいですよね。
また、マタニティーブルーは長引くと「産後うつ病」と診断されることもあります。
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そこで今回は、マタニティーブルーの診断基準と産後うつ病について、お話ししていきたいと思います。
マタニティーブルーとは?

マタニティーブルーとは、お産を終えて数日の間に涙もろくなり、気持ちが落ち着かず悲しくなって、不安になったり、怒りっぽくなったりする状態です。「マタニティーブルーズ」と呼ばれる場合もあります。
この状態は一時的にみられる自然なもので、産後1週間から10日くらいで落ち着く場合がほとんどです。
お産の後は、急激に低下するホルモンなどの影響で気分が落ち込みやすくなり、頻回な授乳による睡眠不足や育児がうまくいかないことなどが要因となって、マタニティーブルーが起こると考えられています。
このように、正確には「産後」に起こるものをマタニティーブルーといいます。しかし、妊娠に伴う自分の体や環境の変化により、お産の前にもマタニティーブルーのような状態になることがあります。
産後のマタニティーブルーの症状については、こちらの記事も読んでみてください。
マタニティーブルーの診断
マタニティーブルーの診断はどのようにして行われるのでしょうか。厚生省研究班による診断基準があるのでご紹介します。CとDは専門用語ばかりなのですが、そのまま載せることにします。
以下のAからDまでのすべての項目を満たす。 | |
A | 以下の2項目の両方を呈する状態が、出産後でかつ5日までに発症し、産後2週間未満で消失する。
1)特別な状況との関連なく泣きたくなったり、実際に(数分間)泣くなどの涙もろさ |
B | 以下の症状のうち少なくとも2項目を満たす。
1)不安(過度の心配) |
C | RDC(research diagnosis criteria)の定型うつ病、準定型うつ病、循環気質型人格、気分易変型人格、断続うつ病、双極性障害、恐慌性不安障害、全般性不安障害、強迫症、恐怖症、身体化症、摂食障害、精神分裂病、分裂感情障害、分類不能の機能性精神病、のいずれの基準をも満たさない。 |
D | RDC(research diagnosis criteria)の器質的疾患、精神活性物質常用障害、人格障害のいずれからも説明できない。 |
CとDを簡単に表現すると、「マタニティーブルー以外の精神的な病気とは診断できない」という意味です。あらゆる精神的な病気に当てはまらないことを明確にして初めて、マタニティーブルーだと診断できるのです。
また、Aにあるように「出産後でかつ5日までに発症」し、「産後2週間未満で消失する」のがマタニティーブルーです。AとBの基準を満たしていても、妊娠中や産後2週間以上経って症状が落ちつかない場合、マタニティーブルーとは診断できないということです。
マタニティーブルーは病気ではなく、あくまで一時的な状態です。自然に症状がなくなっていくので、産後に医師から「マタニティーブルー」という診断を実際に受けることは、滅多にありません。
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症状が産後2週間以上続く場合の診断
それでは、産後2週間以上経ってもマタニティーブルーのような症状が続くとき、どのような診断となるのでしょうか。この場合、マタニティーブルーから「産後うつ病」に移行している可能性が高いです。
産後うつ病は、名前の通り「うつ病」のひとつで、珍しくない病気です。マタニティーブルーとは違って病気なので、自然に治ることはほとんど期待できません。そのため、できるだけ早く診断を受け、適切な治療をする必要があります。
産後うつ病の症状と診断
産後うつ病の症状は、うつ病と同じです。気分の落ち込みがひどく、何事に対しても意欲がなくなり、食欲が極端にないか食べすぎる、眠れないまたは寝すぎてしまう、自分を責めすぎてしまう、死にたいと強く思ってしまうなど、非常に深刻な状態となります。
産後うつ病は、マタニティーブルーから移行することもあれば、産後数か月してから発症することもあります。日常生活への復帰、復職などの環境の変化がきっかけとなることが多いので、注意が必要です。
産後うつ病を早い時期に診断するため、「エジンバラ産後うつ病自己質問票(EPDS)」が広く使用されています。これは、過去1週間の精神状態について、10項目の質問に答えていくものです。産後1か月健診や新生児訪問のときに実施されることがあります。
この質問票で診断はできませんが、産後うつ病の可能性が高い人を見つけることができます。その人に対して、うつ病の症状があるか、さらにそれらの症状が2週間以上続いているかどうかを確認し、医師による診断へとつなげていきます。
そもそも「診断」とは?
「診断」という言葉を辞書で調べると、大体このようなことが書いてあると思います。
”医者が患者を診察して病状を判断すること。転じて、物事に欠陥があるかどうかを調べて判断すること。”
つまり、「診断」という言葉のもともとの意味は、医師による病気の判断のことです。「性格診断テスト」など、「診断」という言葉が使われる場面は多くあります。しかし、病気の判断については、専門の医師が行う「診断」が最も信用できるのではないでしょうか。
マタニティーブルーや産後うつ病の診断は「精神的な病気かどうかの判断」なので、最終的には精神科の医師に診てもらう必要があります。気持ちの変化に気付くのはとても大切ですが、自分で診断はできません。「私は大丈夫」と決めつけないように注意しましょう。
まとめ
マタニティーブルーの診断は、ただ症状があるだけではなく、発症時期や他の精神的な病気でないことを確認する必要があります。産後2週間以上経っても症状が落ち着かない場合は、マタニティーブルーには当てはまらず、産後うつ病の疑いがあります。
産後うつ病は病気であり、自然に治ることはほとんど期待できません。また、マタニティーブルーから移行することもあります。産後うつ病は、予防や適切な治療のため、早い時期に診断してもらうことが大切です。
「エジンバラ産後うつ病自己質問票(EPDS)」は、マタニティーブルーや産後うつ病の可能性が高い人を見つけるために使用されます。その人に対して、うつ病の症状の有無や期間などを確認し、医師による診断へとつなげていきます。
「診断」のもともとの意味は、医師による病気の判断です。自分で「マタニティーブルーかも」と気付くことはとても重要ですが、自己判断で「私は大丈夫」と決めつけるのは危険です。
つらいときは、誰かに気持ちを伝えてください。そして、最終的には医師に診てもらい、診断をお願いしましょう。深刻な状態になるのを避けるためにも、自分ひとりで抱え込まないようにしてくださいね。
マタニティーブルーの解消法については、こちらの記事もご覧ください。産後だけではなく、妊娠中の方にも役立つ内容です。
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