マタニティーブルーと産後うつ病はどちらも産後に起こり、気分の落ち込みが主な症状です。そのため、この2つをほとんど一緒のものだと考える人も多いのですが、実は大きく違います。
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そこで今回は、マタニティーブルーと産後うつ病との違いについて、できるだけわかりやすくお話ししていきたいと思います。
マタニティーブルーとは

マタニティーブルーとは、お産を終えて数日の間に涙もろくなり、気持ちが落ち着かず悲しくなって、不安になったり、怒りっぽくなったりする状態です。「マタニティーブルーズ」と呼ばれる場合もあります。
この状態は一時的にみられる自然なもので、病気とは違います。産後1週間から10日くらいで落ち着く場合がほとんどです。遅くても産後2週間までにはみられなくなります。
お産の後は、急激に低下するホルモンなどの影響で気分が落ち込みやすくなり、頻回な授乳による睡眠不足や育児がうまくいかないことなどが要因となって、マタニティーブルーが起こると考えられています。
産後うつ病とは
産後うつ病とは、簡単に言うと「産後」に起こりやすい「うつ病」です。産後は、ホルモンの急激な変化や育児のストレスなどから、うつ病を発症しやすい時期になっています。
産後うつ病は、基本的にはうつ病と同じです。気分の落ち込みがひどく、何事に対しても意欲がなく、食欲が極端にないか食べすぎる、眠れないまたは寝すぎる、自分を強く責める、死にたいと強く思うなど、深刻な状態になります。
産後2週間以上経ってもマタニティーブルーのような状態が続く場合は、産後うつ病の可能性を考える必要があります。また、お産の後数か月してから、環境の変化がきっかけとなって発症することもあります。
うつ病とは
うつ病は病気のひとつです。本人の気持ちの問題だと言われることもありますが、それは大きな間違いです。うつ病は、脳で働く神経の伝達物質の働きが悪くなる病気です。
気分や意欲、記憶など、人の感情についての情報がうまく伝わらなくなってしまい、こころだけではなく、からだにも様々な不調が出てきます。体調不良が実はうつ病のせいだった、という場合もあるので、注意が必要です。
うつ病が起こる原因は、まだわかっていないところが大きいのですが、様々な要因が重なることで発症すると考えられています。
その人がもともと持っている遺伝的要因に、環境の変化、ストレスやからだの病気などが複雑に重なって起こるのでは、と言われています。
うつ病になりやすいのは、まじめで責任感が強く、人あたりも良く、周りからの評価も高い人だと言われています。
悩みをひとりで抱え込んでしまったり、限界を超えて頑張りすぎてしまったりするために、こころのバランスを崩してしまうと考えられています。
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マタニティーブルーと産後うつ病の違い
マタニティーブルーと産後うつ病は、どちらも気分の落ち込みが主な症状です。そのため、違いがよくわからないという人が多くいます。
ここまでの内容を読んでいただければ、違いは十分に理解してもらえると思います。しかし、さらにわかりやすくするために、3つの違いに分けてお話ししていきます。
違い1.病気かどうか
マタニティーブルーは病気ではありません。一方、産後うつ病は病気です。これが最も大きな違いになります。
マタニティーブルーになると涙もろくなったり気持ちが落ち着かなくなったりしますが、これらは一時的な状態なので、自然にみられなくなっていきます。病気とは違い、治療の必要はありません。
産後うつ病は病気なので、ほとんどが自然には治らず、そのまま放っておくと症状が悪化していきます。マタニティーブルーとの違いは明らかです。できるだけ早い時期に治療を始める必要があります。
違い2.発症時期
マタニティーブルーと産後うつ病では、発症時期も違います。マタニティーブルーはお産を終えて数日の間に出現し、遅くても産後2週間までには症状がなくなります。
産後うつ病は、マタニティーブルーが長引いて悪化したような形で発症する場合と、産後数か月の間に発症する場合とがあります。
産後いつも通りの生活に戻るときや仕事へ復帰するときなど、環境が大きく変化する時期の発症が多いと言われています。これが2つ目の大きな違いです。
違い3.対処の仕方
病気かどうかが違えば、対処の仕方も全く違います。病気でなければ何もしなくていいのですが、病気であれば治療しなければ治りません。
マタニティーブルーは、無理にどうにかしようとする必要はありません。マタニティーブルーは自然な状態であり、時間が解決してくれるからです。気持ちをゆったり持つようにして、誰かに話を聴いてもらうのが良いと思います。
マタニティーブルーへの対処の仕方は、こちらの記事にも詳しくまとめています。ぜひ参考にしてみてください。
⇒マタニティーブルー解消法とは?こんな症状に注意!
産後うつ病は、できるだけ早い時期に対処するというのが何よりも大切です。まずは信頼できる人に相談しましょう。地域の保健福祉センターの窓口などでも相談に乗ってもらえます。十分な休養も心の回復につながります。
相談してもよくならないときは、できるだけ早い時期に精神科や心療内科を受診してください。産後うつ病は早い時期ほど治療の効果が高く、専門医師のカウンセリングを受けたり薬を飲んだりすれば治せる病気です。
もし産後うつ病を放っておいたら…
ここでちょっと怖い話をします。もし産後うつ病をそのまま放っておいたらどうなるのか、という話です。
うつ病はどんどん悪化します。母親として赤ちゃんを育てていく自信が持てず、落ち込み、将来への希望がなくなっていきます。赤ちゃんと一緒に死にたいと考えるようになり、無理心中という最悪の事態も起こり得ます。
また、産後は赤ちゃんと2人きりでいることが多く、孤独な環境です。うつ病が悪化すると、ちょっとした理由で赤ちゃんを傷つけてしまったり、かわいく思えなくなって育児を放棄してしまったりといった虐待も起こってきます。
産後うつ病になるお母さんは、赤ちゃんを大切に育てていこうと必死です。うつ病になってしまうくらい一生懸命に頑張った結果、赤ちゃんを傷つけたり殺したりしてしまうなんて、あまりに悲しすぎますよね。
産後うつ病は本人のせいではなく、誰でも発症する可能性があります。でもすぐに正しい対処さえできれば、最悪の事態は防ぐことができます。すぐ対処するかしないかは、その後大きな違いを生みます。
何かおかしいなと思ったら、誰かに話を聴いてもらってください。家族や友達に話せなかったら、地域のサービスを利用してもいいです。
それで良くならなかったら、勇気を出して、病院に行ってみてください。その行動が自分と赤ちゃんを救うことになります。そして、疲れ切った心が回復するまで、休みましょう。
まとめ
マタニティーブルーと産後うつ病は、似ている部分もありますが、とても大きな違いがあります。
マタニティーブルーは病気ではなく一次的な状態で、お産を終えて数日の間に出現し、産後2週間までに消失します。病気とは違い、自然にみられなくなるので治療は要りません。
一方、産後うつ病は名前の通りうつ病のひとつであり、病気なので治療が必要です。マタニティーブルーが長引いて発症する場合と、産後数か月の間に発症する場合があります。
産後うつ病には、カウンセリングや薬を飲むなどの治療があり、早期に始めるほど効果が高くなります。早く対処できれば短期間で治る病気です。
しかし、放っておくと症状がどんどん悪化して、無理心中や虐待など最悪の事態を引き起こす場合もあります。治療も長引きます。早く対処できるかどうかでこんなにも違います。
産後うつ病は誰でも発症する可能性があります。気持ちが落ち込んだり体調が悪くなったりしていると感じたら、頑張りすぎずに、誰かに話を聴いてもらいましょう。
マタニティーブルーと産後うつ病の違いを知っておくと、最終的にはお母さんと赤ちゃんの命を守ることにつながります。
最後に、周りのご家族の方。本人がこの違いを知っていても、頑張りすぎて自分では気付けない場合も多いです。もし産後に疲れ切っていたら、ゆっくりと話を聴いてあげてください。お願いします!!
マタニティーブルーと産後うつ病については、以下の記事もぜひご覧ください。
⇒マタニティーブルーは診断できる?長引くなら産後うつ病かも!
⇒産後のマタニティーブルーってどんな症状?時期にも注意!