場所は産婦人科の診察室。妊娠初期の女性が、医師から「自然流産」と診断されました。泣いている女性に、医師がこう言いました。
「今回は残念でしたが、そんなに泣かないで。よくあることですから。また次があります、頑張って!」
……これは、私が助産師経験の中で実際に遭遇した場面です。もし自分だったら?と想像せずにはいられませんでした。
医師は女性を励まそうとしたのだと思います。でも、泣きたくなくても涙は出てきますし、よくあることだとしても「次がある!」なんてすぐには思えませんよね…。
スポンサーリンク
「なんで流産しちゃったんだろう。繰り返したくないし、原因が知りたい。」
「妊娠がわかって嬉しいけど、流産が心配。何に気をつければいいのかな。」
この記事にたどり着いてくださったということは、きっとこのような思いがあるのではないでしょうか。
そこで、今回は『妊娠初期に自然流産が起こる原因』について、できるだけわかりやすくお話ししていきますね。
最後には私なりの考え方もお伝えしますので、もし良いなと思ったら取り入れてみてください♪^^
自然流産は意外と多い
自然流産という言葉の意味は「妊娠22週になる前に、妊娠が自然に終わってしまうこと」です。
この時期に赤ちゃんが生まれてしまうと、現在(2018年時点)の医療技術では、赤ちゃんの命を助けることができないのです。
妊娠がわかったときに、まさか自分が自然流産になるかもしれないなんて、予想しないですよね。でも実は、自然流産を経験している人って意外と多いんです。
自然流産は、すべての妊娠の8~15%くらいの割合で起こると言われています。
15%というのは「7回の妊娠のうち1回以上」という割合です。さらに、年齢が高くなるにつれて自然流産の確率も高くなっていきます。
このことから、自然流産は珍しくないとわかっていただけると思います。ここで私が伝えたいことは、次の2つです。
1.妊娠したら、心の準備をしておく
心の準備がないと、自然流産という悲しい出来事を受け入れるのは、かなり厳しいことなのではないかなと思います。
妊娠がわかって嬉しい気持ちと一緒に、もしかしたら…という気持ちも、ちょっとだけ持っていてほしいです。
2.自分だけじゃないことを思い出す
もし自然流産になってしまったら、「自分の何かが悪かったんじゃないか」「赤ちゃんごめんね」「私は子どもを産めないんじゃないか」……こういった色んな考えが頭の中をぐるぐるとして、もう悲しくて仕方なくて、涙が出てきてしまうかもしれません。
そのとき、自分だけじゃない、ひとりじゃないと思えたら、少しだけ心が軽くなって、この出来事を乗り越える力がきっと湧いてきます。
たくさんの人が自然流産を経験していて、その悲しみを乗り越えてお母さんになっている。このことを、どうか忘れないでいてくださいね。
自然流産のほとんどが妊娠初期に起こる
妊娠初期は、妊娠週数だと0~15週までの時期のことです。
そしてなんと、自然流産のうち80%は「早期流産」で、妊娠12週までに起こります。
つまり、自然流産のほとんどは妊娠初期の間に起こるのです。
…言葉だけではちょっとわかりづらいので、妊娠初期と自然流産の時期を表にまとめてみました。イメージするのに役立ったら嬉しいです。*^^*

自然流産の原因は2つに分けられる
ここからが今回のメイン、自然流産の原因についてのお話です。大きく2つに分けて解説しますね。
1.赤ちゃん側の原因
赤ちゃん側の原因で起こる自然流産とは、赤ちゃんの染色体(遺伝の情報を持つ物質)に何か問題があって、妊娠が自然に終わってしまうことです。
染色体は遺伝の情報を持っていて、体の設計図のようなものです。そこに問題があると、赤ちゃんが順調に成長できずに自然流産になってしまうのです。
赤ちゃんの染色体の問題は、妊娠したときにはすでに確定しています。そのため悲しいことですが、最初から自然流産になる運命だった…と言うこともできます。妊婦さんのせいではないですし、誰にもどうすることもできないのです。
まれに夫婦のどちらかが染色体の問題を起こす因子を持っていることがあるので、何度も自然流産を繰り返すときには検査をすることがあります。
2.妊婦さん側の原因
妊婦さん側の原因による自然流産は、実はあまりありません。もし起こるとすれば、こういった原因が考えられます。
- 細菌やウイルスなどの感染
妊娠初期に妊婦さんが細菌やウイルスに感染すると、赤ちゃんがお腹の中にいられずに自然流産になることがあります。
- 子宮や卵巣、ホルモンの分泌、免疫などの問題
子宮の形や卵巣の機能など、妊婦さんの体の状態によっては、自然流産につながることがあります。
- 夫婦間の血液の相性が合わない
夫婦の血液の組み合わせによっては、自然流産になりやすいことがあります。
自然流産を何度も繰り返してしまう場合は、こういった妊婦さん側の原因がないか探ることになります。
さらに可能性は少ないですが、ごくまれにこのような原因で自然流産になることもあります。
- 下腹部への強い衝撃
- 精神的なストレス
- 過度の労働
- たばこやアルコール
- 薬剤
後期流産であれば、こういった環境の原因もある程度は考えられます。かといって気にしすぎるのもかえってストレスになるので、生活の中で少しだけ気をつけることができれば良いと思います。
妊娠初期の自然流産はほとんど防げない
自然流産の80%が、妊娠12週までの「早期流産」だと先ほどお話ししました。そしてこの「早期流産」は、赤ちゃん側の原因で起こることがほとんどです。
赤ちゃん側の原因は、妊娠がわかったときすでに決まっていて、防ぐことができません。原因がわからない自然流産も多く、妊婦さんも医療者もどうすることもできないのが現状です。
まとめると、妊娠初期の自然流産は防ぐことがとても難しく、ほとんど「受け入れるしかない」ということになります。
妊婦さん側の原因は取り除けることも
ただ、何もできないわけではありません。まれにですが、妊婦さん側の原因で起こる自然流産もあるので、その原因を作らないようにすることはできます。
妊娠の可能性があるときは、薬(飲み薬・塗り薬・湿布などあらゆるもの)に気をつけて、病院や薬局で「妊娠している可能性がある」と必ず伝えてください。
感染にも注意をした方がいいです。人混みを避けたり、マスクや手洗いうがいなどの予防対策をしたり、空気の乾燥する冬は加湿をしたり、といった工夫がおすすめです。
特に妊娠初期に気をつけたい感染症と予防法については、以下を参考にしてみてくださいね。
- 風しん……抗体検査で免疫がない場合は特に予防対策が重要です。家族で免疫のない人がいたら予防接種を受けてもらってください。
- 麻しん……流行時はできるだけ外出を控えるなどして予防しましょう。
- 梅毒……性的接触で感染します。妊婦健診で必ず検査をするので、健診は欠かさず受けてくださいね。
- トキソプラズマ……加熱が不十分な肉を食べたり、猫のフンやフンに汚染された土に手を触れたりしないようにしましょう。
- りんご病……流行時はできるだけ外出を控えるのが良いと思います。
- リステリア症……食品を介して感染します。加熱殺菌していないナチュラルチーズ、肉や魚のパテ、生ハム、スモークサーモンなどの食品は避けましょう。
妊娠初期に自然流産を経験する意味
ここからは私なりの考え方になるので、もし自分に合わないなと感じたら、読まなかったことにしてください。*^^*
まず前提として、「赤ちゃんはお母さんを選んで生まれてくる」というのが私の考え方です。
私は、出来事のひとつひとつに必ず意味があると思っています。そして、どんな出来事も良い面と悪い面を併せ持っていると考えています。
自然流産の場合、赤ちゃんは命を失うことになり、妊婦さんはとても悲しい思いをします。良い面なんてないだろう!と思うかもしれません。
でも例えば、こんな考え方もできるのではないでしょうか(受け入れがたいかもしれませんが……)。
- 赤ちゃんは、何らかの理由で妊娠が途中で終わってしまうことを最初から知っていた。でも少しだけお母さんのそばにいたかった。
- 赤ちゃんは、自然流産という経験を通してお母さんに成長してもらいたいと思い、あえて今回は妊娠途中でのお別れを選んだ。
このように想像すると、もしかしたら赤ちゃんは悲しんでいなくて、むしろ短い間でもお母さんのそばにいられたことを喜んでいるかもしれません。実際の赤ちゃんの気持ちは誰にもわからないので、正解は無いと思います。
最近は無事に妊娠や出産を終えることが当たり前だと思われがちですが、決してそんなことはありません。自然流産は、赤ちゃんに会えることがどれほど特別なことか、妊婦さんに教えてくれる出来事なのです。
乗り越えられない試練はやってこないと聞きます。つらい経験は人を成長させます。そのときはただただ悲しくて苦しくて気付けなくても、後になってみると必要な経験だったと感じることが多くあります。
悲しいときはたくさん泣いて悲しんでいいんです。思い切り悲しみの感情を味わってから、その後に少しずつ自分なりの意味を見出していければいいのではないでしょうか。
まとめ
スポンサーリンク